WS18
日本行動療法学会 第35回研修会

WS18
タイトル:
EMDR(眼球運動による脱感作と再処理法)の基礎と臨床
講師:
市井雅哉

所属:
兵庫教育大学大学院発達心理臨床研究センター

対象:
初級~中級

定員:
30名
このワークショップは定員に達しております。


概要
アメリカの臨床心理士F・シャピロが1989年に発表したこの方法は、今日、英、米、独、仏、豪、スウェーデン、イスラエル、北アイルランドなど多くの国が発表するPTSDの治療ガイドラインに「実証された最も効果がある心理療法」の1つとして載せられている。同レベルの評価を得ている治療法には暴露療法、認知療法、ストレス免疫訓練がある。
他の方法との比較で、メカニズムの違いなどが議論されているが、EMDRでは暴露による消去という部分は決して大きくない。脳内の肯定的な記憶が否定的な記憶のネットワークに結びついていくという適応的情報処理モデルという考え方をしている点に特徴がある。EMDRでは宿題の形で暴露を促す必要はなく、苦しい暴露的な再体験は面接室の中で、それも極力短く抑えることが可能である。
EMDRでは、トラウマについて、映像、否定的な自己評価、置き換わるべき肯定的な自己評価、その妥当性、映像と否定的な自己評価に焦点を当てた際の感情、その強さ、身体感覚を同定する。これらを意識しながら、25往復程度の素早くリズミカルな眼球運動(もしくは両側性の刺激)を導き、視覚イメージ、身体感覚、認知などを問う。報告されたクライエントの気づきに焦点を当てて次の刺激を加えるという形で、自然な連想の流れが十分に肯定的な連想の終わりに至るまで続ける。治療者の側から肯定的な連想へのつながりを促すこともできる。
過去の否定的な記憶を扱えるEMDRはPTSD以外にも、広い適用が可能である。例えば、認知的な歪みが過去の虐待、しつけ、失敗体験などを起因としていることがわかった場合、最近の思考を修正するよりも、その歪みを受け入れてしまったより幼少期の記憶の中で修正できれば、より強力で、般化可能な形で認知を適応的に変えることができる。被虐待経験から生への執着が薄かった30代の離婚女性が、移行対象の喪失のモーニングワークをEMDRで扱うことで前向きに変わった事例を紹介する。
現在、北米、ヨーロッパ、南米に続き、アジアにもEMDR学会が設立され、日本EMDR学会(http://www.emdr.jp)は800名余の会員がいる。
EMDRがクライエントの肯定的な力を活かす方法であるという魅力を実習を交えて感じていただけたらと思う。
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