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タイトル:
摂食障害治療: CBT-EやDBTをどう実践するのか
概要
摂食障害、神経性過食症(以下、過食症)の治療は非常に難しいです。「摂食障害は治ったためしがない」と面と向かって言われたことも、とある精神科医の「摂食障害は治らないので、(おまじないでも)何でもしてみるべきだ」という新聞のコラムを読んだこともあります。CBTは過食症を対象とする最もエビデンスのある治療法で、研究では約半数の人が「回復」します。反対にいうと半数の人にしか有効でないため、オックスフォード大学のFairburn教授は、摂食行動のみならず、完全主義、感情不耐性、対人関係の問題、中心的な自己評価の低さをも治療対象とする強化CBTを提唱しています(Cognitive Behavior Therapy and Eating Disorders, 2008, Guilford Press)。しかし、その効果が驚異的に改善したかというと、「多少改善した」としか言えないのが現状です。
しかも、実際の患者さんは、「厳しい審査」を経て研究に参加した患者さんと全く違います。まず予定通りに来院しないことから始まり、来ても最も基本である食事日誌(24時間自己監視記録)を書いてこないことも日常茶飯事で、平気です。そこが実際の治療の難しさであり、皆さんの摂食障害治療に対する印象の背景にあるものです。患者自らが治療に取り組み、継続できるかが治療の成否を決めます。それには治療側の初期の臨床評価(見立て)とそれに基づく治療の動機づけ、治療契約が重要です。CBTが可能かどうか、また強化CBTなのか、その様な枠組みを外した方が有効なのか、その臨床判断が実は最も難しいところです。それが研究参加への「厳格な審査」を経ると、半数もの人に有効なのに、実際の治療場面ではさっぱりという乖離の理由なのです。
摂食障害治療に興味のある人には、まずはCBTが適応と見立てた患者を対象に食事日誌を基本に介入してもらいます。一方、小生自身は食事日誌を全く使わず、マニュアルから離れて持続因子に対する治療介入を進めます。症例によって全く違うアプローチを行っているのです。
今回は、まず見立て、動機付け、治療契約を実際の症例を通じて説明します。次に摂食障害のCBTの基本である食事日誌(24時間自己監視記録)への介入の仕方を、実際の食事記録を元にロールプレイしていただきます。その後、強化CBTで扱っている摂食障害に直接関連しないが治療上重要な部分である対人相互関係(社交不安障害)、感情統制、マインドフルネス(弁証法的行動療法)などを演習や症例呈示を行いながら、一緒に考えていきたいと思います。
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