WS19
日本行動療法学会 第35回研修会

WS19
タイトル:
境界性パーソナリティ障害等,感情調節が困難な患者さんへの対応
講師:
坂野雄二

所属:
北海道医療大学心理科学部臨床心理学科

対象:
初級~中級

定員:
200名


概要
 境界性パーソナリティ障害(BPD)をはじめとして,双極性障害Ⅱ型,いわゆるrapid cyclerと呼ばれる問題等,感情調節に困難を感じる患者さんがいる。しばしばうつや不安など多様な問題を同時に抱えている。
 たとえば,BPDと呼ばれる人に対しては,彼らは自傷行為その他の問題行動を繰り返す,治療に薬物療法は無効である,生い立ちの中で形作られたパーソナリティの障害を治すには長い時間が必要である,あるいは治らない,人格の再構築が必要である,家族の病理が無くならなければ患者は良くならない,周りの人を操作しようとする,やっかいな患者さんである,等といった見方がされる。また,幼少期から思春期までの「トラウマ」から解放されなければ問題は改善しないともしばしば指摘される。しかし,本当にそうなのだろうか。実は彼らは,自分なりにベストを尽くそうとし,何とか自分で問題解決をしようとしている。見方を変えれば,彼らの行動は助けを求めるものでもある。ただ,感情の調節に大きな困難を感じ,問題解決を行う時のやり方はあまり上手ではない。したがって,単に心に原因があると考えるのではなく,彼ら自身が良くなろうと努力していることを認め,周囲からは「問題」だと言われる行動を取らざるを得ない状況を受容し認めることが,彼らへの関わりを考える上では重要である。そして,彼らが適切な問題解決の発想を獲得することができるよう援助することが大切である。
 そこで本ワークショップでは,BPDをはじめとする感情調節に困難を感じる患者さんに対して,(1)治療導入期における適切な共働的治療関係をどのように築くか,(2)気分変動を適切に理解し,問題改善の目標をどのように適切に理解するか,(3)問題解決スキルの獲得と向上をねらってどのような指導ができるか,(4)感情調節困難に併存する不安と抑うつの問題をどのように解決するか,(5)「自分の周りは危険である」,「私は弱い」,「私の考え方や感じ方は人から受け入れられていない」という彼らに特徴的な否定的スキーマをどのように修正するか,(6)適応行動に対するセルフエフィカシーと有能感の向上に向けてどのような援助ができるか,(7)家族や友人等とどのように新しい人間関係を形作るか,(8)患者さんに対する周囲の人たちから与えられる随伴性をどのように修正するか, (9)医療従事者や家族への指導をどのように行うか,(10)自殺念慮への対応と危機の予防を考える,という点に着目し,感情調節が困難な患者さんへの指導方法について学ぶ。
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