このワークショップでは、近年注目を集めている、統合失調症の認知機能障害を改善するための認知機能リハビリテーションの理論と実際の実施方法を示すことが目的である。
統合失調症では、仕事や対人関係など社会生活の障害が大きいが、その理由として神経認知機能や社会的認知の障害が想定されるようになっている。非定型抗精神病薬を用いた薬物療法によって神経認知機能障害が改善するかどうかの検討も行われているが、その効果については依然として議論が必要な段階にある。こうした中、障害そのもの改善を狙ったリハビリテーション技法として認知機能リハビリテーションが近年注目されている。池淵(2004)によれば海外では名称,ターゲットとなる認知機能,方法などが異なるさまざまな先行研究が行われている(たとえばMedalia A, McGurk S, Wexler and Bell,ら)が,このうちMcGurk S et al.(2005)は「CogPack」と呼ばれるコンピュータソフトを使って基礎的な認知機能のトレーニング(1回45分,週2回,全24セッション)を実施し、1年後の転帰調査において認知機能リハビリテーション参加群は対照群と比べて、認知機能の改善とともに就労している割合などが有意に多く,社会的機能が高かったことが示唆された。
本ワークショップでは以下のことを行う。
- 統合失調症の認知機能障害(神経認知、社会的認知、自己認識)について概説する
- 認知機能障害についての介入方法について概説する
- 神経認知機能を標的とした認知機能リハビリテーションのメタ解析の結果を解説する
- 演者らの実施した介入研究の結果を紹介する
- 認知機能リハビリテーション専用ソフト「cogPack」とその使い方を紹介する
- 実際の症例を通して、認知機能リハビリテーションの実際の実施方法と、その改善機序が学べるようにする